これって目の錯覚?

これは厳密には目の錯覚とは言えません。

なぜなら目の錯覚とは、私たちの目に異常がないにも関わらず、実際とは違う物が見えてしまうことをいうからです。

もしこれが目の錯覚というなら、「実際には回っていない物が回って見える」ということになります。

ですがこの黒星の動きは、実際に円の内側を回る半径$\frac{1}{2}$の円の周りにある点の動きと全く同じです。

だから、これが目の錯覚なら、全ての動画が目の錯覚になってしまいます。結局は全ての点が動いているだけですからね。

これにも一片の真実があることは確かですが、普通に「目の錯覚」というときに言いたいこととはやっぱり違いますよね。

このことは、もし数学が苦手でなければ、円の内側を小さな円が転がった時の軌道を実際に式を書くことにより確かめることが出来ます。

そのとき、小さな円の円周上に固定された点が描く軌道をハイポサイクロイドといいます(直線の上を円が転がった時の軌道をサイクロイドということを知っている人は多いですよね)。

それを大きな円の半径を$R$、小さな円の半径を$r$にして、公転の回転角$\theta$をパラメータに表示すると

\[ x(\theta) = (R-r) \cos \theta + r \cos ( \frac{R-r}{r} \theta) \] \[ y(\theta) = (R-r) \sin \theta - r \sin ( \frac{R-r}{r} \theta) \]

となります。

この式に、$R=2, r=1$を代入すると, $x = 2 \cos \theta, y = 0$になって、只の単振動になります。

てんとう虫のアニメはこの状況を表していたわけですね。

なお、円の外側を周る場合の式は、

\[ x(\theta) = (R+r) \cos \theta - r \cos ( \frac{R+r}{r} \theta) \] \[ y(\theta) = (R+r) \sin \theta - r \sin ( \frac{R+r}{r} \theta) \]

になり、これをエピサイクロイドと呼びます。

これらの式を導くことはそんなに難しくないので、数学が嫌いでなければ挑戦してみてください。

式を立てるカギは、すでに接触した大円の円周と小円の円周が等しくなることです。

ここから、小さな円の転がった角度が計算でき、あとはベクトルの足し算です。

ちなみにこの式はもう一度出てきますので、数学を憎んでなければ覚えておいてくださいね。

背景に青線で描かれた図形は$R=2.1, r = 1$の場合のエピサイクロイドの軌道と、$R = 4.1, r=1$の場合のハイポサイクロイドの軌道です。

これはSAGEというソフトで描画していますが、数式のグラフを描画できるソフトは他にもいろいろあるので、これも挑戦してみるといいでしょう。

三角関数って学校で習うと何に役に立つのかさっぱりわからないけど、実は今回のアニメーションを作るのも、このきれいなグラフを描くのも、三角関数使わないと無理なんです。

役に立ってる例としてはこれだと微妙だけど、数学を勉強すると、面白くてきれいなことがいろいろできるようになるので、めげずに頑張りましょう。