どうして円の内側を転がったり外側を転がったりすると、回転が一周分ずれるのでしょう?
4種類のやりかたで説明してみましょう。
一つ目は、あえて小円を転がさないと何が起きるかを考えてみることです。
転がさずに、最初に触れていた点を大円に押し付けたまま滑っていくとします。すると一周した時、小円は何回転しているでしょうか。
頭の中で考えても、一回転だと分かるのではないでしょうか。
分かりにくければ、円の外側を見たまま円周を一周すると思ってみると良いと思います。すると周りの景色もちょうど一周するはずです。
そしてもう少し考えると、その回転方向が小円が転がるときの回転と逆だということまで気づくのではないでしょうか。
ちなみに円の外側を回るときは、円の外側を回るときは、円の中心を見たまま一周すると思ってみると、普通に小円の回転方向と同じ方向に一周することになります。
まとめると、小円が円周の2倍の距離を滑っていくとき、平らな場所なら0回転、円の内側なら-1回転、円の外側なら1回転します。
そして同じ経路を転がっていくと、平らな場所なら当然2回転します。
同様に円の内側及び円の外側を転がると、転がっていないときと同じだけの差が平らな場所との間に出るはずなので、内側が$2-1=1$回転、外側が$2+1=3$回転することになる、というわけです。
このやり方の弱点としては、実際には動きを、平らな場所を転がる運動と滑らずに円周上に動く運動に分けることは出来ない、ということでしょうか。
正確さを求めると瞬間的な変化を考えなくてはいけないので、高校で習う微積分をちゃんと(本当にちゃんと)勉強する必要があります。根性のある方は登るに足る山ですよ。
もう一つのやり方は、滑らずに転がるとすると、転がった距離と中心が動いた距離が同じになることを考えれば良いというものです(これも瞬間的な動きを考えると分かりやすいでしょう。自転車が動くとき、タイヤが押し出す瞬間の距離と自転車が前に進む距離は同じはずです)。
すると、外側を回るとき小円の中心の動く起動は、大円の半径と小円の半径を足した半径の円周になります。
円周は半径に比例するので、大円の円周より小円の円周一周分多く、小円は回転していることになるわけです。
同様に内側を転がるとき小円の中心は、大円の円周から小円の円周を引いた円の円周を動きます。
よって、大円の円周から小円の円周一周分少なく、小円は回転しています。
これが一周分差が出る理由というわけです。
ちなみにこれは、一つ後に考察する多角形の場合にも応用可能です。
ただし、中心の動く距離が回転した距離というところに一抹の怪しさがあり、ちゃんと正当化すべきですが、わかりやすいので、この考え方は個人的お勧めです。
3つ目は、外側を回るときにしか使えませんが、多角形で考えてみる、という手もあります。
例えば、正方形で考えると、辺の上では平面の上なので普通に2回転します。
そして角度の上では方向転換のときに、ちょうど外角90°分回転します。それが4回起こるので、360°、つまり1回転多くなるのです。
角の数を増やしていっても、外角の和は360°のままなので、どこまでも角を増やしていくと円を近似できます。(もし超準解析という非常に楽しい道具を使うと、円とは無限に角の多い正多角形なので、今の議論は実は正確な議論だと主張することが可能になります)
しかし多角形の内側に円を転がそうとすると、円周と辺が交わってしまい、イメージしにくくなるという欠点を持ちます。
そして、最後の一番直接的で強力な議論は、転がる円周上の点の軌道を数式に書いてみることでしょう(もし数式に重度のアレルギーを持っていなければですが)。
一つ前の解説ページの式をもう一度載せると、
となります。
一つ目の三角関数の引数の$\theta$が固定された円の中心を中心に転がる円がどれだけ公転したかであり、2つ目の三角関数の引数が転がる円がどれだけ自転したかを示している。
$\frac{R \pm r}{r} = \frac{R}{r} \pm 1$なので、一回転差が出ることが一目瞭然ですね。
どの考え方も、微妙に違う場面に応用できるので、各自考えてみましょう。
数式アレルギーは一回目は重度のアナフィラキシーショックは起きないので、一度は数式にも挑戦してみてくださいね。