淡中 圏の脳髄(永遠に工事中)

このページについてフィードバック(感想・意見・リクエスト)を送る

In the long run, we are all dead

このむかし話が少し変なわけ

書庫に戻る

このむかし話が少し変なわけ

 そうしてお姫様と王子様は末長く幸せに暮らしましたので、俺の頭から謎の液体が漏れ始めた。それがにゅるにゅると卑猥な形に姿を変えるのを横目に、王国の民もまた幸せでした。人びとの活気により自然と経済は潤い治安も良くなりまして、結果としてそれは俺の醜く歪んだ似姿になった。それはにやりと耳まで口の端を裂くような凄惨な笑みを浮かべて窓ガラスを叩き割りながら部屋から飛び出し、王子様とお姫様の間にはそれはそれは可愛らしい女の子が生まれます。国中がそれを喜びお祭り騒ぎで、俺はそれを捕まえようと必死に後を追いかける。放っておいたらなにをしでかすか分からないからだが、そのお祭りは王女様の結婚相手が決まる16歳の誕生日まで続きました。その日世界中から我こそはと集まった男たちが王女の愛を勝ち取るために様々な競技でしのぎを削り、俺の偽物を追いかけ続けた俺は競技場の外の盛大なお祭り騒ぎに巻き込まれてしまう。それは、俺が奴の後ろ姿を見失ってしまい、競技もたけなわとなったころのことでした。競技場を見降ろすお城のバルコニーに王女の姿が現れて競技場から大歓声が上がり、彼女の姿を一目見ようと人が殺到している方向に俺も向かってみようと思った。そこはどうやら競技場のようで、そのとき王女様に近づく怪しい影が現れます。その男は皆の見ている前で王女様の細い腰を横抱きに抱えるとそのままこの国の伝統的な赤い煉瓦屋根の上を軽々と飛び越えていき、俺は突然人びとがざわめき騒ぎだしたせいでもみくちゃにされて自分がどっちから来てどっちに行こうとしていたのかも分からなくなる始末だ。人に押し倒されて幾つもの足に踏み潰されぼろ屑のようになる俺、そして突然のことのショックで声を上げることも出来ず気を失ってしまう王女様。競技を中断していた猛者たちが手に手に剣や槍や弓を持ちこの狼藉者を追いかけ、やはり俺の上をどたどたと走っていくせいで俺は中身のあんこが全部外に出てしまい中身空っぽのぺしゃんこになってしまう。俺の中からはみ出したあんこは様々な姿の人の形をしたものになり王女を助ける者たちに加わったり逆にそれを邪魔したりして、さらわれた王女様を助けるための国中上げての闘いは何年も続きました。そして人びとがこの長い戦に嫌気を差し始めたころのことでした、道端でぺしゃんこになった俺はAEDマニアの少年に発見された。こいつはまあ軽度のアスペルガーなのであろうがなぜかいつもAED(自動体外式除細動器)の事ばかり考えて生きていて建物の中に入ったりするとAEDがどこにあるかを確認しないと不安で不安で仕方がないと言う奴でそいつが生きているのか死んでいるのかよく分からない俺を発見してしまったものだから喜び勇んでそれが適切な処置なのかどうかもろくに考えず俺に電気ショックをかましてもまあ仕方がないと言ったら仕方がないのだが(ちなみに実際適切かどうかなど考える必要はなく、それを判断するのはAEDの装置自体なので、倒れている人がいたらとりあえずAEDは正しい。もちろん救急車を呼ぶのを忘れないでほしい。ただ、今回のAEDの装置が下した判断自体には俺は多少の疑義を抱いている)、王都の上空にかかる天空に俄かに雷雲が立ち込め王女をさらった魔物たちが潜伏する闇深き山には常ならぬ風が吹き渡りました。人びとは不安げに異様な色合いの空を見上げ鳥たちはその空を右往左往し獣たちも巣のあるものは巣に身を潜め住処無きものたちはめいめい体を物陰に押し込め何か恐ろしいことが起こる予感に身を固くしていましたが、それらすべてが息を吹き返した俺の最初の一息で空っぽになっていた俺の体の中に吸い込まれてしまった。しかもそれがあまりに急だったので関係ないものまで大量に引きずり込んでしまいおかげでダイエット中にもかかわらず体重が5キロも増えたうえ、それ以降俺の紡ぐむかし話にはたくさんの不純物が混じるようになってしまいましたとさ。AED好きなアスペルガーの少年とかね。

解説

昔話好きだなあ、本当に。多分、混ぜ方を思いついて一気に書いたんだと思う。覚えてないけど。

タグ

書庫に戻る